教員歴6年の元教員が執筆
関わってきた子どもの数述べ300人以上
こうした悩みは、教師の誰もが一度は感じたことがあるのではないでしょうか?
実は、“特性理解”という視点を取り入れるだけで、こうした行動の背景にある原因に気づき、学級経営をラクにすることができるのです。
表面に見える行動の裏に隠れた“見えない部分”を理解することが、学級崩壊を防ぎ、クラスをまとめる鍵となります。
この記事の内容
1.目に見える問題と目に見えない問題(氷山モデル)
2.ケーススタディ
3.まとめ:氷山モデルで学級運営を変える
1.目に見える問題と目に見えない問題(氷山モデル)
氷山モデルとは?
氷山モデルでは、子どもの問題行動を「目に見える部分(氷山の上部)」と「目に見えない部分(氷山の下部)」に分けて理解します。
目に見える部分(上部)
授業中に立ち歩く、授業を妨害する、学習を放棄する。
目に見えない部分(下部)
感覚統合の未熟さ、自己肯定感の低さ、生活習慣の乱れなど。
2.ケーススタディ:B学級で起きた崩壊の兆し
B学級は、小学校5年生の30人クラス。
担任のA先生(教員歴3年)は、初めての高学年担任を任されました。
子どもたちは学力や生活習慣に差があり、一部の児童に問題行動が見られる状況でした。
1. 見え始めた兆し
初期の問題行動
- A君:授業中に頻繁に立ち歩き、時には教室の外に飛び出してしまう。
- B君:隣の子にちょっかいを出し、トラブルが絶えない。
- Cさん:指示を受けても「わからない」と繰り返し、学習を放棄。
クラス全体への影響
- 他の子どもたちが集中できず、授業中の騒がしさが増加。
- 「またA君が立ち歩いてる」と児童同士の不満も高まり、関係が悪化。
- 担任のA先生は注意を繰り返すが、状況は改善せず、クラス全体が混乱。
2. 問題の複雑さ
目に見える問題(氷山の上部)
- 子どもたちが授業中に立ち歩く、指示を無視する、授業を妨害する。
目に見えない問題(氷山の下部)
1. 感覚統合の課題
- A君は感覚統合が未熟で、じっと座ることが困難。身体を動かさないと落ち着けない状態だった。
2. 自己肯定感の低さ
- B君は家庭環境が不安定で、保護者からの関心を得られず、「注目されたい」という思いから問題行動を繰り返していた。
関連記事:発達性トラウマ (作成予定)
3. 学習への苦手意識
- Cさんは基礎的な学力が不足しており、授業についていけないストレスから「学習放棄」に走っていた。
4. 学級全体の空気
- 問題行動が目立つ児童にばかり先生の目が向き、真面目に取り組む児童が「見られていない」と感じ、不満が広がっていた。
3. 解決策の実践
1. 感覚統合の課題に対処(A君への対応)
• ジャンプやストレッチをクラス全体で導入
授業の前や合間に1分間の運動を取り入れる。
• 動ける役割を任せる
プリント配布や教室の片付けなど、授業中に合法的に体を動かす機会を作る。
• 冷静にさらっと注意する
大声で叱らず、「座り直そう」と冷静に伝えることで誤学習を防ぐ。
コラム:お試し行動と誤学習
お試し行動とは?
子どもが「この行動をしたらどうなるのか?」を試すために起こす行動です。
例:授業中に立ち歩く、大声を出すなど。若い先生や新しい担任に対して行われることが多い。
誤学習とは?
お試し行動に対し、教師が過剰に反応すると、子どもは間違った学習をして「注目を集める手段」としてその行動を覚えてしまいます。
誤学習を防ぐポイント
1. 冷静に対応する:無視も良くない。「座り直そう」とさらっと伝える。
2. 良い行動を褒める:「席についている〇〇さん、素晴らしいね」と声をかける。
3. 行動を置き換える:立ち歩く子にはプリント配りなどの役割を与える。
2. 注目の仕方を変える(B君への対応)
• 問題行動ではなく良い行動に注目する。
• 「机に向かっている時間が増えたね!」と具体的に褒める。
• 名前を呼ぶ回数を増やす。
挨拶や短い会話で注目欲求を満たす。存在を認める。
3. 学習のハードルを下げる(Cさんへの対応)
• 授業導入に簡単な問題を用意
例:導入でクイズを取り入れ、5分でも授業に参加できる時間を作る。
• わかる問題まで遡って個別対応をする。
関連記事:チャットGPTに授業導入クイズを作ってもらう(作成予定)
4. 学級全体への配慮
• 目立たなくても真面目に取り組んでいる子に目を向ける。
「〇〇さんはいつも時間通りに着席していますね」と落ち着いている子を褒める。
コラム:問題行動をなくすのではなく、良い行動に置き換える
「太るからお菓子を食べちゃダメ」と思うと、逆に食べたい気持ちが強くなりませんか?代わりにヨーグルトを食べていいと言われた方が守れそうですよね。
問題行動を「やめさせよう」として「やってはいけません」というと問題行動が強化されることが少なくありません。
「別の行動に置き換える」発想を持つことが鍵です。
• 立ち歩き → プリントを配布する係を任せる。
• 騒ぐ子 → 授業中の発表や意見交換に積極的に参加させる。
良い行動に注目し、増やしていくことで相対的に問題行動が減っていきます。
3.まとめ:氷山モデルで学級運営を変える
問題行動は、表面に見える部分だけで解決しようとすると、むしろこじれることがあります。
行動の背景にある“目に見えない部分”を探り、小さな工夫から取り入れて見てください。
明日から試せる3つの工夫
1. 全員で1分運動
• ジャンプやストレッチを授業前・途中に取り入れ、集中力をアップ!
2. 良い行動を即褒め
• 「しっかり座れているね!」と具体的な行動に声かけ。
3. 動きたい子には役割を
• プリント配りなど動ける仕事を頼んでエネルギーを活かす。
これらの簡単な工夫を取り入れることで、クラス運営が少しずつラクになり、子どもたちの成長をサポートできるはずです。
氷山モデルを活用し、明日から一つでも試してみませんか?
さらに詳しく学びたい方は発達性トラウマの記事もおすすめです! (作成予定)