任せる仕事がない?障害者雇用で「社内ニート」が起きる理由と業務の切り出し方
教員歴6年の元教員が執筆
関わってきた子どもの数述べ300人以上
特例子会社へのアドバイス経験あり
・任せられる仕事が見つからず、出勤しているだけの状態になっている
・とりあえず席はあるけれど、実質「社内ニート」のようになってしまっている
・「負担をかけちゃいけない」と思うあまり、十分な仕事を渡せていない
形式的な雇用のまま時間だけが過ぎると、
注意ポイント
・本人の自信やモチベーションが下がる
・周囲の社員も「障害者は仕事ができない」という誤解を持ちやすくなる
・担当者だけが業務管理に追われて疲弊してしまう
といった、誰にとってもつらい状態になりがちです。
本当は、「仕事がない」のではなく
“仕事の切り出し方・見つけ方”が整理されていないだけかもしれません。
この記事では、
・なぜ「任せる仕事がない」「社内ニート」状態が起きるのか
・障害者雇用で任せやすい業務の共通点
・業務を細かく分解し、切り出す方法
・出勤しているだけにならないための運用(マニュアル・トライアル・体制づくり)
を、元特別支援学校教員としての現場経験も交えながら、具体的に解説します。
読み終わる頃には、
「明日、自社でどんな業務を切り出せそうか」を
少なくとも3つは挙げられる状態になることをゴールにしています。
「この子には任せられる仕事が少ないかもしれない」と感じていた生徒が、
慣れた作業では驚くような集中力と丁寧さを発揮する姿を何度も見てきました。
逆に、私自身が苦手で「これは難しいだろう」と思い込んでいた作業が、
実はその生徒の方が得意分野だった、という気づきもたくさんありました。
障害者雇用でも同じで、
“できる仕事がない”のではなく、
“見つけ方と切り出し方を知らないだけ”というケースが多くあります。
ここから先は、
・任せやすい業務の条件
・実際の業務分解の例
・「出勤しているだけ」をやめるための運用の工夫
を具体的に見ていきましょう。
1. なぜ「任せる仕事がない」「社内ニート」が起きるのか?
・障害者雇用で任せる仕事がない
・出勤しているだけ、社内ニートのようになっている
・とりあえず特例子会社に入れて数だけ増やしている
・短時間勤務の人を増やしているが、実際の戦力になっていない
・「負担をかけちゃいけない」と思って仕事を十分に与えられていない
しかし、現場を丁寧に見ていくと、多くの場合は「業務設計」と「職場の認識」に原因があります。
代表的なパターンを挙げると、次のようなものです。
ポイント
・業務が「職種単位」でしか整理されておらず、タスク単位まで分解できていない
・「障害のある人にはこの仕事は難しいだろう」という思い込みが強く、
本当は任せられる仕事まで候補から外れてしまっている
・責任の重い仕事と、そうでない仕事が混ざっており、
「ミスが怖いので全部自分で抱え込む」担当者が生まれている
・障害者雇用社員の業務管理を、特定の担当者ひとりに任せきりにしている
・「とりあえず法定雇用率を満たす」ことが目的化し、
具体的な業務設計や定着支援が後回しになっている
こうした要因が重なると、
・本人:やりがいがなく、自分は役に立っていないと感じる
・周囲:障害者は仕事ができない/扱いが難しいという印象を持つ
・担当者:自分の業務+管理業務で疲弊する
という、誰も得をしない構造が生まれてしまいます。
大事なのは、
「障害者雇用だから特別な仕事を用意しないといけない」と考えることではなく、
・既存の業務をタスク単位まで分解する
・その中から「任せやすい仕事」を見つけていく
という、業務側からのアプローチです。
次の章では、
「任せやすい業務とはどんな仕事か?」を整理していきます。
2. 障害特性に応じた業務の見極め方
障害には、身体的なものから知的、精神的なものまでさまざまです。業務を選ぶ際には、それぞれの障害特性を理解し、適切な仕事を切り出します。
今回は比較的多くの人に当てはまりそうな特性をもとに説明していきます。
※下記は一例のため当てはまらない人もいます。
繰り返し性のある業務
繰り返しのある業務は、一定のペースを維持できます。見通しが持てないことからパニックに繋がることを防ぎ、精神的な負担が軽減されることがあります。
具体例として、袋詰めやテープ貼り、封筒作成、切手貼りなどの軽作業やデータ入力が挙げられます。
特に障害がない方で繰り返し作業は苦痛になる人も多いかと思いますが、障害特性によってはここでものすごい集中力を発揮する人もいます。
コミュニケーションの齟齬が出にくい業務
対人関係のストレスが発生しやすい業務は、コミュニケーションの齟齬や精神面での負担を考慮する必要があります。
口頭指示だと伝わりづらく、視覚的な支援が必要な場合もあります。なるべく障害者理解のある人が関わるようにしてあげたほうが業務がスムーズに進みやすいです。
顧客との対話が少なくて済むバックオフィス業務が向いている場合もあります。
成果が目に見える業務
自分の仕事の成果が実感できる業務は、抽象的な理解が苦手な人でも、モチベーションを保つ上で効果的です。製造や在庫管理など、達成感を感じられる業務も適している場合があります。
細かい作業や集中が求められる業務も、障害がある方でも工夫次第で取り組める可能性があります。事務作業や品質管理の補助なども候補となります。
メモ
これまでに話した業務の共通点は以下の通りです。
・見通しが持てる
・作業や成果が目に見える
・抽象的でなく、具体的な指示が出しやすい
業務を切り出す時にはこの3点を頭に入れておくと考えやすくなります。
3. 具体的な業務の切り出し手法
業務を適切に切り出すには、現在のタスクを見直し、分解する作業が求められます。次に、切り出しのプロセスと具体的な手法を紹介します。
業務の分解
まず、企業内の各業務を細分化し、業務を洗い出します。
この時のポイントは障害者には難しいだろう、という偏見を持たないこと。本当は任せられる仕事にも関わらず、自分の偏見が原因で任せられなくなってしまうのは勿体無いです。
教員の仕事は多岐に渡りますが、ここでは大まかに授業準備、保護者対応、事務仕事を細分化してみましょう。
授業準備
・教材研究(教科書を読む、補足知識を増やす、評価項目やテストの確認)
・授業の構成(生徒の理解度把握、導入、展開、まとめ、評価の取り方を考える)
・板書計画を立てる
・必要な道具の準備(黒板に貼るイラスト作成など)
保護者対応
・連絡帳(学校からの個別の連絡事項、保護者の連絡への返事など)
・電話対応
・面談(学校での様子、今後の相談など)
事務仕事
・学級通信作成(週予定など)
・学年だより作成
・時数の計算(1週間にどの授業を何時間行ったかなど)
・クラスや学年の会計
・テストの丸付け
・出欠記録の月末作業
・面談日程調整
・年度初めの仕事(名簿作成、机や椅子・ロッカー・靴箱などの名前書き、クラス替えをした学年はファイルなどを新しいクラスに分け直す、など)
業務の切り出し
業務を細分化したので、業務の切り出しを行います。
先ほど伝えた通り、見通しが持てる、目に見える、具体的な指示が出しやすい業務を洗い出します。作業者が考えて判断する必要がない、誰がやっても同じようにできるというのがポイントです。
実際に教員の仕事でやってみます!切り出せそうな仕事に黄色い線を引きました。
授業準備
・教材研究(教科書を読む、補足知識を増やす、評価項目やテストの確認)
・授業の構成(生徒の理解度把握、導入、展開、まとめ、評価の取り方を考える)
・板書計画を立てる
・必要な道具の準備(黒板に貼るイラスト作成など)
保護者対応
・連絡帳(学校からの個別の連絡事項、保護者の連絡への返事など)
・電話対応
・面談(学校での様子、今後の相談など)
事務仕事
・学級通信作成(週予定など)
学級通信はクラスの様子を伝えたり、来週の計画を自分が立てるので、その指示を出すより自分でやった方が早いです。
・学年だより作成
カレンダーに行事を打ち込むことをお願いできそうです。
・時数の計算(1週間にどの授業を何時間行ったかなど)
正直迷いました。時数の計算が間違っていると授業時間が足りなくなってしまうためです。ダブルチェックは必要になりますが、それでもやってもらえると助かると思いました。
また、自分自身が苦手な作業なので、障害がある人には難しいかもしれないと思っていることにも気がつきました。偏見は持たない、と意識すると自分よりもこの業務が得意な障害者もいるかもしれないと思いました。
・クラスや学年の会計
これも迷ってやめましたが、計算が得意な人なら任せられるのかもしれません。多少複雑なので今回は切り出しませんでした。
・テストの丸付け
これを切り出さなかったのは意外でしょうか?実は丸付けは判断が難しいことが多々あります。漢字の微妙なとめ、はね、はらいなど。どのラインは丸か、三角かなどが難しいです。また、児童生徒の理解度を把握するために自分で丸付けをしたい気持ちもあります。(こうやって手放さないから、教員の業務は増えていくんだろうな…)
一部任せるという判断をした方がいいのかもしれませんね。テストは自分がやるけれどドリルは切り出すなど。ポイントは責任の重さ。比較的軽ければ任せてしまう。心配ならチェックする。チェックだけなら負担は減ると思います。
こうやって少しでも任せる範囲を増やしていくことが相手の成長につながる気がします。
・出欠記録の月末作業
これは毎月同じことをするので、一度教えればその後はすぐにお願いできます。
大した業務ではないですが、面倒なものです。
一人分の仕事では業務が削減されたと感じにくいのですが、例えば1学年3クラスある小学校なら18クラスあるので、18人の仕事を減らすと考えると大きいですよね。18クラス分になると単純作業でもそれなりの仕事量にもなります。
・面談日程調整
これも悩んで初めは切り出しませんでした。保護者の希望日をパズルのように当てはめればいいのでお願いはできますが、抜けや漏れが心配でした。
また、兄弟での日程合わせや話をしたいから最後に入れたいなどの微調整をお願いするのが大変なので自分でやった方が早いと思いました。
でも、これも18クラス分お願いできるなら丁寧に説明して任せたほうが後々学校全体として楽になっていく気がしました。
業務を任せるのは慣れるまでは大変で、自分でやった方が早いと感じがちですが、長期的な観点で切り出しをしていくことが大切だと実感しました。
・年度初めの仕事(名簿作成、机や椅子・ロッカー・靴箱などの名前書き、クラス替えをした学年はファイルなどを新しいクラスに分け直す、など)
年度初めはものすごく忙しいので、このような誰でもできる仕事はぜひお願いしたい!学校も障害者雇用をもっとできそうですね。
マニュアルやチェックリストの準備
業務の内容や手順を分かりやすくまとめるため、マニュアルやチェックリストを作成します。これにより、作業の進捗を一目で確認でき、働く側も自信を持って進められる環境が整います。
適性テストやトライアル期間の設け方
業務が障害者の得意分野や性質に合っているか見極めるために、トライアル期間を設けます。この期間中に、適正なフィードバックを行い、双方が無理なく続けられるかを見定めます。
チーム内での役割分担と支援体制
切り出した業務が孤立することなく、チーム内での役割として機能するようにします。サポートや確認が必要な業務については、チームメンバーやリーダーと連携し、適切なフィードバックが受けられる体制を整えましょう。
4. よくあるQ&A
Q. 障害者雇用の社員に、繰り返し作業ばかり任せるのは失礼ではありませんか?
A. 「本人の得意」と「職場のニーズ」が合っていて、本人も納得しているなら問題ありません。
ただし、単なる“雑用押し付け”にならないように、
・成果が見える形にする(数値や仕上がりで実感できる)
・感謝やフィードバックをきちんと伝える
・希望や成長に合わせて、少しずつ役割を広げる余地を用意しておく
といった工夫が大切です。
Q. 仕事を切り出したいのですが、ミスが怖くて任せられません…。
A. いきなり「責任の重い仕事」を丸ごと任せる必要はありません。
・ミスしても致命傷にならない仕事から始める
・ダブルチェックを前提に設計する
・まずは「一部だけ」任せてみる
といったステップを踏むことで、
本人も職場も、少しずつ「任せること」に慣れていくことができます。
本文でも書いた通り、最初は「自分でやったほうが早い」と感じがちです。
ただ、長期的には「任せられる仕事を増やしていくこと」が、担当者自身の負担軽減にもつながっていきます。
5. 障害者雇用の成功のために押さえておくべきポイント
職場環境の整備
物理的な環境(段差のないオフィス、休憩スペースの確保)だけでなく、心理的なサポート体制を整えることが重要です。定期的なコミュニケーションを通じ、困りごとがあれば早めに対応できる体制を確立しましょう。
フィードバックと柔軟な対応
業務を割り当てる際に、定期的なフィードバックを行い、適宜内容を調整していくことも大切です。特に初めての業務では、改善点を適切に伝えるとともに、対応が難しい部分があれば内容を見直し、持続可能な働き方を追求します。
キャリアパスの提供
単なる作業の担い手としてではなく、長期的なキャリア形成の視点で支援することも、企業と本人双方の成長に役立ちます。スキルの向上や新たな業務への挑戦機会を提供し、モチベーションの向上を図りましょう。
6. まとめ
障害者雇用で「任せる仕事がない」「社内ニートになっている」と感じる背景には、多くの場合「本人の能力不足」ではなく、「業務設計」と「職場の認識」があります。
本記事でお伝えしたポイントをあらためて整理すると、次の通りです。
- 「仕事がない」「出勤しているだけ」の状態は、多くが業務をタスク単位まで分解できていないことから生まれている
- 障害者雇用で任せやすい業務には「見通しが持てる」「作業や成果が目に見える」「具体的な指示が出しやすい」という共通点がある
- 業務を分解するときは、「障害者には難しいだろう」という思い込みをいったん脇に置き、本当に必要な能力だけを見極めることが大切
- ミスが怖い業務は、責任の重さで段階をつけて、まずは一部だけ任せる・ダブルチェック前提にするなどの工夫で広げていける
- マニュアルやチェックリスト、トライアル期間、チームでの支援体制を整えることで、「出勤しているだけ」の状態を防ぎやすくなる
障害者雇用は、「特別な仕事を用意すること」よりも、
既存の業務を見直し、特性に合う形に切り出していくプロセスが何より重要です。
まずは、自社の業務を紙に書き出し、
- 見通しが持てるか?
- 成果が目に見えるか?
- 具体的な指示が出しやすいか?
という3つの視点でチェックしてみてください。
「任せる仕事がない」と感じていた職場でも、
明日から切り出せるタスクが、きっといくつも見えてくるはずです。
障害者社員に合った業務を切り出すには、障害特性に合わせた業務の分解と適切な支援が欠かせません。
企業全体が適応し、協力し合うことで、働きやすい環境が整い、会社としても大きな利益を享受できるでしょう。
こちらもおすすめ