教員歴6年の元教員が執筆
関わってきた子どもの数述べ300人以上
1歳児自宅保育中
そんな思いから、習い事を増やしてしまう親は少なくありません。
この記事では、習い事をたくさんさせたがる親の心理や背景、そして子どもに合った習い事の選び方について考えてみます。
1. なぜ習い事を増やしたくなるのか?親の心理的背景
1-1. 小学校準備への不安
多くの親が「小学校に入ったときに勉強や友達関係で遅れを取らせたくない」という思いを抱きます。
「みんなピアノを習っているからうちの子も」「英語は小さいうちにやらせないと後で困る」といった周囲との比較が、親の行動を後押しすることがあります。
1-2. 社会的なプレッシャー
SNSやママ友との会話から、「他の子どもたちがこれだけ頑張っているのに、自分の子はどうだろう?」という無意識の競争心が生まれます。
また、習い事の数や種類が「教育熱心な親」の指標になっているように感じることも。
コラム:3歳神話の影響
「3歳までにやらないと後からでは遅い」という考え方が、この心理に拍車をかけています。しかし、実際には子どもにはそれぞれのペースがあり、一律に焦る必要はありません。
1-3. 将来への期待
親の多くは、純粋に「子どもの可能性を広げたい」「特技を持たせたい」という思いを抱いています。一方で、「何もやらせていない」という漠然とした不安感も、習い事を増やす原因となります。
1-4. 親自身の経験からくる焦り
「自分が子どもの頃に経験できなかったことを子どもには与えたい」という心理もあります。
例えば:
• 「ピアノを習えなかったから、子どもには音楽の楽しさを味わってほしい」
• 「自分が英語で苦労した分、子どもには早いうちから英語を学ばせたい」
こうした親心は理解できますが、子どもにとっては時にプレッシャーとなる場合があります。
2. 親が見落としがちな「子どもの発達段階」
「敏感期」とは、子どもが特定の能力を自然に身につけやすい時期のことです。この時期に適切な刺激や活動を提供することで、スムーズに学びを進められます。一方、敏感期が来ていない状態で無理に何かをやらせると、子どもがストレスを感じたり、苦手意識を持ってしまうこともあります。
敏感期の特徴
1. 自然な興味や集中力
• 子どもが特定のことに強く興味を示すのは、脳がその能力を吸収しようとしているサインです。
• 例えば、ひらがなに興味を持ち始めた時期に自然と書きたがるようになるのは敏感期の表れです。
2. 学びがスムーズ
• 敏感期にその分野に触れると、無理なく習得でき、本人も楽しみながら学べます。
• 逆に、まだ準備ができていない時期に無理に何かをさせると、苦手意識や自己肯定感の低下につながる場合があります。
敏感期の例と成功・失敗のポイント
1. 言語の敏感期(0~6歳)
• 成功例:2~4歳頃に言葉を話し始めると、絵本や歌に興味を持つことが増えます。この時期にたくさんの言葉に触れると、語彙が自然に増え、言葉を使う楽しさを感じられます。
• 失敗例:まだ話し始める準備ができていない段階で無理に話させようとすると、親子ともにストレスがたまり、言語発達が停滞することも。
2. 書字の敏感期(3~6歳)
• 成功例:ひらがなに興味を持ち始めた時期に、字を書く練習を始めると、楽しみながらスムーズに覚えられます。
• 失敗例:まだ書字の敏感期が来ていないうちに無理やり字を書く練習をさせると、うまく書けないことへの挫折感で「字を書くことそのものが嫌い」になってしまうことがあります。
3. 運動の敏感期(1~4歳頃)
• 成功例:走ったり跳ねたりすることを自然と楽しむ時期に、簡単な体操や公園遊びを取り入れると、運動能力が伸びるとともに、身体を動かす楽しさを感じられます。
• 失敗例:無理に複雑な動きをさせようとすると、運動への苦手意識が生まれたり、ケガのリスクが高まります。
3. 無理なく習い事を選ぶための3つのポイント
3-1. 子どもの興味を第一に考える
• 子どもが自然に興味を示している分野に着目しましょう。
• 親の「やらせたいこと」ではなく、子どもの「やりたいこと」を尊重することが大切です。
3-2. 家庭全体のバランスを意識する
• 習い事が増えると家族全体の時間に影響します。一週間のスケジュールを見直し、余裕を持たせましょう。
• 自由な遊びや家族の時間を確保することが、子どもの成長においても重要です。
3-3. 「やらない選択」も大切に
• 習い事をやめたり減らすことも選択肢の一つです。
• 例えば、ピアノをやめたことで自分で歌を楽しむようになるなど、新しい可能性が生まれる場合もあります。
コラム:発達障害と誤診されるケース
ある小学生のAくんは、習い事が多すぎて毎日遅くまで宿題をこなしていました。その結果、睡眠不足から集中力が低下し、学校でも多動のような行動をとるように。発達障害を疑われましたが、生活習慣を見直すと改善したケースです。
ポイント:学習や習い事以前に、基本的な生活習慣を整えることが大切です。
4. まとめ:親の焦りを手放し、子どもの成長を信じる
習い事の選び方を見直すことは、親が自分の不安や期待に気づき、子どもにとって最善の環境を整える第一歩です。
「今、どんな活動を求めているのか?」
「どんな敏感期にいるのか?」
「何が好きで、何に興味を持っているのか?」
こうした子どもの姿を丁寧に観察することで、「焦らなくても大丈夫」という安心感を得られるはずです。
親が安心して見守ることで、子どもはのびのびと成長し、自分に合った習い事を楽しむことができます。