「あのミス、また本人のせい?」と思ったら
「何度言っても時間を守れない」「伝票をまた間違えた」
現場でミスが続くと、つい「本人の注意力ややる気の問題」と考えてしまいがちです。
特に、障害のある人やグレーゾーンの人には、その評価が偏ってしまうことがあります。
原晋監督の「3つのミス」から学ぶ
青山学院・原監督の失敗の分類は、現場支援にも応用できます。
- シンプルミス:単なるうっかり
- システムミス:環境や仕組みの問題
- チャレンジミス:挑戦の結果としての失敗
この考え方の良さは、「すべてを本人のせいにしない」ことです。
支援においても、それぞれのミスに対してアプローチを変える必要があります。
【ケース①】「伝票を間違える」──実はシステムミス?
よくある現場の例
40代男性社員。伝票の「受領日」と「発注日」をよく逆に書いてしまう。
周囲からは「また?」「確認しなよ」と叱られる日々。
構造的な背景
- 記入欄のレイアウトが左右逆で視認性が低い
- 文字が小さく、見えにくいフォント
- 期日が西暦と和暦で混在している
対処法
- 記入例を視覚化したシールを用意
- 不要項目を塗りつぶし、書く場所を限定
- シンプルな入力フォームに変える(デジタル化含む)
【ケース②】「いつも上司の話を聞き漏らす」──設計の見直しが必要?
よくある現場の例
朝礼での口頭指示。「倉庫から青いボックスを3箱、12時までに持ってきてね」
実際には「黒いボックスを1箱」だけ持ってくる。
上司は「聞いてないの?」「何回言わせるの?」と不満。
構造的な背景
- 複数の情報を一度に処理するのが苦手
- 聞き慣れない単語や色の指示に混乱
- メモを取る習慣がまだ定着していない
対処法
- 指示内容は紙で渡す or ホワイトボードに書く
- メモを本人が書き、それを読み上げて確認
- 「1ステップずつ」指示を区切って伝える
【ケース③】「新しい仕事で失敗した」──チャレンジミスとして捉える
よくある現場の例
作業スピードも安定してきた30代社員に、新しい業務(出荷準備)を任せた。
しかし「梱包漏れ」が何度か発生し、「まだ早かった?」と上司が悩む。
構造的な背景
- 手順をすべて覚えていないまま作業に入った
- やり直す時間がなく焦っていた
- 「一人でやらなければ」という思い込み
対処法
- 一時的にチェックリストを導入する
- 「わからなければ聞いていい」環境を保証
- ミスを責めず、内容を一緒に振り返る文化をつくる
ミスの見え方が「障害」になるとき
同じミスでも、「その人にとって構造的に繰り返されてしまう」ものは、
本人の努力や意志では防ぎきれないことがあります。
だからこそ、その失敗が「本人のせい」なのか、「構造のせい」なのかを分けて考える視点が重要です。
まとめ:責めるより、構造を見直す
- そのミス、本当に「うっかり」か?
- 設計に無理がないか?
- チャレンジの過程ではなかったか?
「またか…」と言う前に、ミスを構造で捉え直すこと。
それが、障害のある人も含め、誰もが安心して挑戦できる職場づくりの第一歩になります。