おもちゃを買っても遊ばない…なぜ?|支援センターでは夢中なのに家ではスルーな理由
支援センターで夢中になって遊んでいたおもちゃ。
「これなら家でも楽しめるはず!」と期待して買ったのに、いざ家に持ち帰ると全然遊ばない…。そんな経験はありませんか?
せっかくお金をかけて買ったのに遊んでくれないと、がっかりしますよね。
でも実は、「おもちゃそのもの」が悪いとは限りません。
支援センターと家庭では、そもそも環境がまるごと違うからです。
この記事では、元教員・子育て中の立場から、
- なぜ支援センターでは遊ぶのに、家では遊ばないのか
- 「アフォーダンス」という考え方で環境を見直すヒント
- 家でできる具体的な工夫と、それでも遊ばないときの考え方
をわかりやすくまとめます。
「支援センターではあんなに遊んでたのに…」よくあるモヤモヤ
同じおもちゃなのに、家だと見向きもしない
支援センターで、子どもがあるおもちゃにずっと夢中になっているのを見ると、親としてはとてもうれしいですよね。
「このおもちゃ、家にもあったらいいかも!」と感じて、
- 帰り道にネットで検索してポチっと購入
- 次のお買い物で同じようなものをカゴに入れる
ところが、家に届いてワクワクしながら出してみると…
- 最初だけ少し触って、すぐに離れてしまう
- 箱から出した瞬間に別のおもちゃへ行ってしまう
- そもそも目に入っていないように見える
そんな「え、あの熱中してた時間は何だったの?」ということが起こります。
まず知っておきたいのは「おもちゃだけの問題じゃない」ということ
ここで一度立ち止まっておきたいのは、
「同じおもちゃでも、置かれている環境が違えば“遊び方”も変わるということです。
つまり
- おもちゃそのもの
- 支援センターと家庭の環境の違い
- そのときの子どもの体調や気分
が重なって、今目の前の「遊ばない」が起こっています。
ここからは、「環境」という視点で支援センターと家の違いを分解してみましょう。
なぜ支援センターだと夢中になるのか?環境を分解してみる
物理的な環境:広さ・明るさ・おもちゃの“見せ方”
支援センターに行くと、まず感じるのは「遊ぶために整えられた空間」です。
- 動き回れる広さ
- 床に座っても痛くないマットやカーペット
- 低い棚に並んだおもちゃ
- 「ごっこ遊びコーナー」「ブロックコーナー」など、テーマごとのスペース
おもちゃは、ただ収納されているのではなく、
「子どもが手を伸ばしたくなる高さ・見え方」で置かれていることが多いです。
これは、「ここに座って遊んでみない?」と環境からささやかれているような状態です。
社会的な環境:他の子ども・支援員さんの存在が生む「やってみたい」
支援センターには、他の親子や支援員さんがいます。
- 他の子が夢中になって遊んでいる様子を見て、マネしたくなる
- 支援員さんがさりげなく遊び方を見せてくれる
- 親同士が話しながらも、子どもの遊びを見守る雰囲気がある
この「誰かが楽しそうにやっている」「一緒にいてくれる人がいる」という空気も、
子どもにとっては大きな「やってみよう」のきっかけになります。
心理的な環境:「ここは思い切り遊んでいい場所だよ」という空気感
支援センターは、「遊ぶための場所」として設計されています。
- 多少散らかってもOK
- 音が出るおもちゃも気兼ねなく鳴らせる
親の側も「今日はここで遊ぶ日」と心構えをしていることが多いので、
家にいるときよりも「遊びに集中していいよ」と子どもに伝わりやすい雰囲気が生まれます。
家とは前提条件がまるごと違う、という前提を持っておく
このように見ていくと、支援センターと家庭では、
- 物理的なつくり
- そこにいる人
- そこで過ごす目的
が最初から違っていることがわかります。
同じおもちゃを持って帰っても、
「遊ぶための環境」から、「生活全体の一部としてのおもちゃ」へと役割が変わるのは自然なことです。
「アフォーダンス」という考え方で、子どもの行動を捉え直す
アフォーダンスとは?ざっくり言うと「その場が子どもにかけているお誘い」
ここで少しだけ、「アフォーダンス」という考え方を紹介します。
難しい専門用語に聞こえますが、ざっくり言うと、
「環境やモノが、その人に『こうしてみたら?』と差し出している“お誘い”」のことです。
例えば、
- 低い段差 → 「乗りたくなる・飛び降りたくなる」
- 丸くて軽いボール → 「投げたくなる・転がしたくなる」
- 低い棚に並んだおもちゃ → 「手を伸ばして触りたくなる」
同じモノでも、置かれ方や周りの雰囲気で「どんな行動に誘われるか」が変わります。
同じおもちゃでも、環境が違うと“誘われる遊び”が変わる
支援センターでは、
- おもちゃが見えるように並んでいる
- 周りの子や大人が遊ぶ様子を見せてくれている
- 「ここは遊ぶ場所」という前提が共有されている
ため、子どもにとっては
「ここで遊んでみていいよ」「触って試してみていいよ」
という強いお誘い(アフォーダンス)が働いています。
一方、家ではどうでしょうか。
- 床の上にポンと置かれている
- 別のおもちゃや日用品と一緒に箱に入っている
- 自分以外に遊んでいる子がいない
こうした条件の違いが、
「遊んでみよう」と言う子どもの気持ちが起きにくいことがあります。
「性格」や「やる気」だけで見ないためのレンズとして使う
アフォーダンスの考え方を知っておくと、
- 「うちの子は飽きっぽいからダメなんだ」
- 「私の関わり方が下手だから遊ばないんだ」
といった性格や親の努力だけの問題にしなくてすみます。
「この環境は、この子にとってどんな“お誘い”になっているんだろう?」
と一歩引いて見ることで、
子どもや自分を責めすぎずに、環境の工夫へと視点を移しやすくなります。
家だと遊ばなくなりやすい“あるあるパターン”
おもちゃの量が多すぎて、一つひとつの存在感が埋もれている
家の中には、支援センター以上にたくさんのモノがあります。
- おもちゃ
- 絵本
- 日用品
- 家具…
おもちゃの数が多すぎると、
子どもにとっては「何で遊んでいいか分からない」「重なっているおもちゃが認識できない」状態になりやすいです。
フタ付き収納に全部イン=「手を伸ばしたくなる見え方」になっていない
片づけやすさを優先して、フタ付きの箱にまとめて収納していると、
- 中身が見えない
- 取り出すまで遊ぶイメージが湧きにくい
という状態になりがちです。
子どもにとってのアフォーダンス(お誘い)は、
「箱」ではなく「箱の中のおもちゃ」にあります。
中身が見えないと、そのお誘い自体が伝わりにくくなってしまいます。
子どもの今の「発達段階」とおもちゃのレベルがズレている
支援センターで遊んでいたときと、実際に家で遊ぶタイミングは、微妙に月齢や発達段階が違っていることもあります。
- 支援センターでは、大人が入りつつ一緒に遊んでいた
- 家では、子ども一人で遊んでほしいと思って出している
この違いで、
- 一人で遊ぶには少し難しすぎる
- 細かい操作やルールが多くて疲れてしまう
という「レベルのズレ」が生まれていることもあります。
支援センターでの“遊び方”を家庭に持ち帰るコツ
まずは「観察メモ」から:何で・どう遊んでいたかを具体的に見る
支援センターに行くとき、
「どのおもちゃで、どんなふうに遊んでいたか」を意識して観察してみるのがおすすめです。
- どのコーナーにいる時間が長かったか
- おもちゃを「並べる」「運ぶ」「壊す」「ごっこ遊びする」など、どんな遊び方をしていたか
- 近くにどんなものが置いてあったか
- 大人(支援員さんや親)はどんな声かけをしていたか
ざっくりでいいので、帰り道や帰宅後にメモしておくと、家で環境を作るときのヒントになります。
家では“ミニ支援センター”を一角につくる
いきなり家全体を支援センターのように整える必要はありません。
ラグ一枚分くらいのスペースでいいので、
- 支援センターでよく遊んでいた遊びに似たコーナー
- その遊びに関係するおもちゃだけを置く
と決めてみるのがおすすめです。
例えば「積み木」なら、
- ラグ+低いテーブル or 床
- 積み木数種類
- 積んだものを壊してもいいスペース
など、支援センターでの遊びを思い出しながら、
子どもにとっての「遊んでいい場所」を小さく区切ってあげるイメージです。
我が家での実践例
積み木
積み木を出すだけでは遊ばないので、おままごと道具としてお皿や松ぼっくり、トングと一緒に出してみました。
低い机も一緒に用意しました。この机のポイントは
- 広すぎず狭すぎない子どもに合わせた広さ
- 子どもが座ると胸くらいでちょうど良い高さ
- 縁があるので積み木が崩れても落ちにくい
- 折りたたみ式なので遊びたい時だけ出せる
インスタで遊びの観察記録もアップしています。
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絵の具

絵の具遊びでは、画用紙を机に置くのではなく、「イーゼル」という立てかけて描けるスタンドをダンボールで自作してみました。
これは段ボールを良い大きさに切ったあと、ガムテープで貼っただけで手間もお金もかかっていません。
イーゼルを取り入れてよかった点
- 子どもが描きたいという意欲が引き出されやすい
- 自分が描いている絵が目の前にあるので見やすい
- そのまま描いた絵を飾れる
それでも遊ばないときのチェックリストと「手放し方」
「この子にはまだ早い/もう簡単すぎる」の可能性
支援センターで見たときと、実際に家で使うときでは、
- 月齢・発達段階
- 親子の関わり方
が少し変わっている場合もあります。
一度、「今のこの子にとって、
- 一人で扱うには難しすぎないか?
- 逆に簡単すぎて物足りないのでは?
と見直してみるのも一つの方法です。
今の興味関心とズレていないか?(運ぶ・登る・壊す…の欲求)
子どもの遊びには、その時期ならではの「ブーム」があります。
- とにかく何でも運びたいブーム
- 登ったりジャンプしたりしたいブーム
- 壊す・崩すことが面白いブーム
支援センターでは、そのブームに合う環境が偶然整っていたのかもしれません。
家で遊ばないときは、
「今のこの子は、どんな体の動き・どんな感覚の遊びを求めているんだろう?」
と一歩引いて眺めてみると、
別の遊びや環境のヒントが見えてくることがあります。
合わないおもちゃは「今はこの家じゃなくて、別の子のところへ行くタイミング」と考える
どれだけ環境を工夫しても、
- その子とは相性がイマイチなおもちゃ
- 今の家庭の生活リズムとは合わないおもちゃ
というのは、どうしても出てきます。
そんなときは、
「このおもちゃは、今はこの家じゃなくて、別の子のところへ行くタイミングなんだな」
と考えて、
- 下のきょうだいへのバトンタッチ
- 友人・親戚の子へのおさがり
- フリマアプリやリサイクルショップ
など、次の役割につなげていくのも一つの選択です。
まとめ|「おもちゃが悪い」でも「親子が悪い」でもなく、環境のチューニングの話
支援センターと家庭では前提が違うから、同じ結果を求めなくていい
支援センターは「遊ぶこと」が目的の場所、家庭は「生活全体」がある場所です。
同じおもちゃでも、
環境が違えば、子どもにかかる“お誘い(アフォーダンス)”も変わるのは当たり前のことです。
ちょっとした置き方・見せ方・関わり方で、子どもの反応は変わる
おもちゃそのものを責める前に、
- どこに置いているか
- どう見えているか
- どんな声かけとセットになっているか
を少しチューニングしてみるだけで、
子どもの「遊んでみようかな」という気持ちが変わることがあります。
買ったおもちゃの“元を取る”とは、「長く遊ぶ」だけじゃなく「学びを知る」ことでもある
もしあまり遊ばなかったおもちゃがあったとしても、
「この子はこういう遊びより、今はここに惹かれるんだな」
「うちの環境は、こういうお誘いになっているんだな」
と気づけたなら、それも立派な学びです。
その気づきは、次におもちゃを選ぶときや、環境を整えるときに必ず生きてきます。
「おもちゃが悪い」「親子が悪い」ではなく、
「環境と子どもの相性を少しずつ調整していくプロセスなんだ」と捉えて、
一緒に試行錯誤していけたらいいなと思います。
