特性とは何か — 「平均」とのズレをどう考えるか
教員歴6年の元教員が執筆
関わってきた子どもの数述べ300人以上
「工夫すれば楽になるよ」「環境を整えると良いよ」とよく言われます。
特に学校や職場では、
こうした言葉にあまり馴染みがない人からすると
と感じるかもしれません。
一方で、支援や工夫の大切さを知っている人でも、
アドバイスが“テクニックだけ”で止まってしまい、うまくいかない経験があるのではないでしょうか。
- 支援のコツを真似しても相手に合わない
- 同じ工夫なのに、効果が出る人と出ない人がいる
実はこれらには、ひとつの共通点があります。
その人が持っている「特性」の理解が抜け落ちていること。
環境を整えるにも、配慮をするにも、
土台となる“その人の特性”がわからないと、どれだけ良い方法でもハマらないことがあるのです。
特性とはなにか?
特性というのは、
表面ではその人の“クセ”や“傾向”として見えることが多いです。
もっと端的にいうと、
“平均”とのズレ
これが特性です。
- 物事をサクサク切り替えられる人
- 一つのことに集中すると周りが見えなくなる人
- 音に敏感な人
- 紙のメモが得意な人/アプリの方が楽な人
こうした違いすべてが「特性」です。
全ての項目が平均だという人はいないので、特性は誰にでもあるものです。
ズレは障害ではない
では、みんなにズレがあるなら、障害とは何でしょうか?
ズレ=障害ではありません。
ズレはあくまでも平均との差分です。
ただ、そのズレを自分で工夫してうまく活用できない場合、支援が必要になり、障害と呼ばれることがあります。
これは障害の社会モデルの考え方に近く、
障害があるのはその人のせいではなく、環境との相性が障害を生むという視点です。
なぜ一般的な方法ではうまくいかないのか
障害の種類によっても原因は異なると思うので、特に神経発達症(発達障害)の場合について考えていきます。
神経発達症の人の場合、脳の使い方や感覚の感じ方、情報処理の方法が平均的な人と大きく異なる場合があります。そのため、
- 原因が目に見えにくいので、なぜできないのか外から分かりにくい
- 一般的に効果があるアドバイスを試してもうまくいかない
例として、スケジュール管理の方法を考えてみましょう。
- 思いついたタスクを付箋に書く
- その付箋を手帳の空いている時間に貼る
この方法は多くの人にとって有効ですが、特性によってはやりづらいことがあります。
- メモを書くこと自体が難しい
- 書いた付箋をなくしてしまう
- 思考がマインドマップのように繋がっているので、付箋に書くと考えが散らばる感覚になる
- 全体を見通したい人と、細かい部分を管理したい人がいる
世の中の手帳や工夫の多くは、平均的な特性に合わせて設計されているため、
“普通にやればうまくいく”方法がハマらない人もいます。
それが目に見えないため、改善が難しく、本人や周囲の人が能力不足だと誤解してしまうこともあります。
効果的な環境調整とは
だからこそ、環境設定や合理的配慮を考えるときには、まずその人の特性を理解することが重要です。
- 物事をどのように感じるのかといった当事者の声
- うまくいかないとき、当事者がどのように感じているのか
- うまくいくとき、なぜやりやすいのか
- 支援はテクニックではなく“相性探し”
この視点を持つことで、どんな環境調整が有効かが見えてきます。
当事者の声を聞くことが全ての始まりであり、当事者の感覚を想像することが非常に重要です。
まとめ
- 特性とは“平均からのズレ”で、誰にでもある
- ズレ自体は問題ではない
- 障害とは、ズレと環境のミスマッチによって困る状態を指す
- 環境調整や合理的配慮は、特性の理解を土台にすると効果が上がる
- 当事者の感覚を聞き、想像しないと支援は始まらない。
まずは、自分や相手の“平均からのズレ”を知ることが、支援や工夫の第一歩になります。